大判例

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大阪高等裁判所 昭和26年(ネ)177号 判決

控訴代理人は「原判決を取消す、昭和二十四年三月三十一日京都市上京区北野白梅町三十四番地に於て開催せられたる被控訴会社臨時株主総会に於ける控訴人等を取締役に選任せる決議は無効なることを確認する、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は「本件控訴を棄却する訴訟費用は控訴人の負担とする」との判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は控訴人に於て「取締役が会社に対し訴を提起する場合に於ては原則として其訴に付ては監査役が会社を代表すべきものであることは商法第二百七十七条(改正前の)の規定するところであるがそれは取締役たる地位に付何等疑義なき場合即ち会社と取締役との関係が適法であり取締役という地位を保持しながら会社に対し訴を提起する場合を律する規定であつて本訴の如く控訴人等取締役選任決議が無効であるとし、その確認を求むるもの即ち控訴人等の取締役たる地位を否定してかかる訴に付ては右規定は適用なく一般原則に従つて取締役が被控訴会社を代表すべきものである。仮に然らずとするも控訴人等は原審最終口頭弁論期日前である昭和二十五年九月三十日に開かれた被控訴会社の株主総会に於て何れも解任せられ、同年十月十七日その旨の登記も完了しているのであるから本訴を不適法として却下することは出来ない」と陳述し、被控訴代理人に於て「本訴は取締役たる控訴人等が被控訴会社を相手として提起した訴であるから監査役が被控訴会社を代表すべきであるのに取締役を以て代表者としているから不適法である、又同じ理由により本件控訴も不適法である、加之控訴人等が何れも既に取締役を解任せられその登記も完了していることは控訴人等主張の通りであるから本訴請求は過去の事実の確認を求むることに帰し確認の利益なし」と陳述した外原判決事実摘示と同一であるから茲に之を引用する。

<立証省略>

三、理  由

本訴提起に当つても、本件控訴の申立に当つても被控訴会社の代表者を取締役指方寅雄として為されたことは本件記録中の訴状及控訴状の記載により明かである。

被控訴代理人は取締役指方寅雄を被控訴会社の代表者として為した本件控訴は不適法であると主張するけれどもその然らざることは後記説示により自ら明であるのみならず取締役指方寅雄が本件に付被控訴会社を代表する資格ありや否やということは本件当事者間に於て争あるところであり、原審に於ても之を取上げて判断を加えて居り従つて又当審に於ても判断すべき事項の一つに属しているのである。代表者にしてその代表資格に争ある者はその争の判断を受くることにつき代表資格あり、従て之を判断した原判決に対する控訴の提起につき代表資格あるものと謂うべきである。それで控訴人等が本件控訴の申立をするに当つて控訴人等の所信に従ひ一審に於ける形態をそのまま襲踏して取締役指方寅雄を被控訴会社の代表者として表示して為した本件控訴を以て不適法ということは出来ない。

本訴は昭和二十五年法律第百六十七号商法の一部を改正する法律施行前である昭和二十五年三月二十日京都地方裁判所に提起せられたものであることは本件訴状に押捺してある同裁判所受付印の記載により明かであつて、右改正法施行後被控訴会社に於て新法によつて会社を代表すべき者を定めた事跡の認むべきものは何も存しないのである。さすれば被控訴会社の取締役たる控訴人等が被控訴会社を相手として提起する本訴に於ては原則としては監査役が被控訴会社を代表すべきものであることは昭和二十六年法律第二百十号商法の一部を改正する法律施行法第二十七条、前記法律により改正前の商法第二百七十七条の規定により明かである。

控訴人等は本訴は控訴人等が自分の取締役たる地位を否定し、その取締役選任決議の無効確認を求むるものであるから斯る場合には前記法条の適用はなく通常の原則に従つて取締役が被控訴会社を代表すべきものであると主張するのであるが、此点に付ての判断は暫く措き代表権限の有無は弁論終結当時に於て之を論ずべきところ今仮に本訴に於ても右法条の適用があつて監査役をして被控訴会社を代表せしむべきものとするも成立に争なき甲第六号証により明かな如く控訴人等は何れも昭和二十五年九月三十日解任せられ、同年十月十七日(原判決前)その旨の登記もなされているのであるからこれが為め既に控訴人等から被控訴会社を相手とする訴に付ては取締役が被控訴会社を代表し得べき通常の状態に復したものであること明かであつて、左すれば当初本訴提起に当つて監査役を被控訴会社の代表者として表示しなかつた違法は之によつて治癒せられ本訴は適法となつたものというべきである。

然らば本訴提起に当つて被控訴会社の代表者として取締役指方寅雄が表示せられ、監査役の表示のないことを以て不適法として本訴を却下した原判決は他の点に付判断を加うるまでもなく失当たるを免れない。

仍て民事訴訟法第三百八十六条、第三百八十八条に則り主文の通り判決する。

(裁判官 朝山二郎 西村初三 藤田彌太郎)

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